先端医療工学研究所内にイノベーションサロン設置

目次

先端医療工学研究所内にイノベーションサロン設置

1.イノベーションサロンの設置

 イノベーションサロンとは、リラックスした雰囲気の中で、医療に関係する多様な人々が出会い、困りごとな どを話し合い、柔軟な発想で解決の糸口を探ることで、イノベーションの創出を目指していく場であり、兵庫県 立大学先端医療工学研究所内に、畑豊副学長をサロン長、坂下玲子副学長を副サロン長として、2022年8月に、設 置されました。
 このサロンでは、特に、看護現場での真のニーズを対話により言語化し、「健康」と「Well-being」関連事業の 創生を目指しています。看護は、患者と看護者の相互作用によって織り込まれる唯一無二のタペストリー(アー ト)に例えられますが、その技の多くは暗黙知として臨床家の中にあり、まだ十分言語化されていません。このサロンは、はりま姫路総合医療センター(はり姫)の敷地 内にあり、参画企業、はり姫の看護師をはじめとする医療 関係者と兵庫県立大学とのメンバーが、患者や医療関係 者のニーズについて実際に耳を傾け、目を向け、また、参画企業からの製品の評価・改良を考えるのに最良の場です。ここでの侃々諤々の議論により、「Needs-oriented なケアの創造を切り口」にして、「健康」と「Well-being」関 連事業を創生できるものと考えております。
 また、兵庫県立大学の強みである,リハビリテーション、 看護、栄養の観点からの社会課題を切り口に、健康とWell-being  を病院の臨床家らと共に捉え、先端の情報科学・工学技術を駆使することで新しい事業創生に挑戦す る場でもあります。

2.参画企業について

 現在、2社の企業に参画頂いています。いずれも素材型メーカーですが、医療関係に活かせる技術や製品をお 持ちの企業で、医療分野へ適用可能な素材や開発品のご紹介を頂いています。 看護師にとっては、素材メーカーという異業種との交流ですが、意見交換は活発に行われています。

3.イノベーションサロンの目標:Needs-oriented  な〇〇ケア  /  製品事業の創出

看護現場のニーズの言語化を参画企業メンバーと協働で取り組み、従来の基礎研究から臨床への橋渡しをする 研究開発ではなく、現象の解明や、ものづくりを経て、臨床の場で評価することで、needs-oriented な〇〇ケア事 業の創出を目指しています。

4.イノベーションサロンの活動内容

1)開所式でのグループディスカッション
 開所式では、6グループに分かれ、看護現場の困りごとについて、参画企業の研究員、はり 姫の看護師、本学の教員が、議論しました。ここで出てきた困りごとについては、その後 の検討会等でフォローしています。

2)参画企業が希望するテーマに応じたヒアリング会    ニー ズとシーズのマッチング イノベーションサロンに参画して頂いている企業からいろいろな素材や開発中の製品(シーズ)を紹介頂き、看護の現場 での使用の可能性(ニーズとの合致)の議論を行いました。コロナ禍の影響もあり、対面での検討が難しい場面もあり ましたが  Web  とのハイブリッド形式で検討会を行いました。
 このような検討会には、はり姫から、看護師(精神科、緩和ケア、認知症ケア、救急、がん看護専門、感染管理、産婦人科、 外来、ICU)、医師、理学療法士等の方々、県立大学からは看護学部研究科、環境人間学部研究科、工学部研究科 の教員が参加し、臨床の現場での率直な意見を聞くことができています。参画企業は、B to B の事業形態が多い素材型のメーカーであり、普段なかなか聞けないユーザの声が聞けると いうメリットがありました。
 また、看護師をはじめとするはり姫の医療関係者も新しい技術に興味を示しており、また、日頃から感じてい る不便さ等もあってか、勤務時間外の会合にもかかわらず、検討会では、いろいろな意見が出されています。中 には、開発の方向を示唆する意見がある一方、開発者が熱い思いを持って説明したにもかかわらず、現場のニー ズと合致していないという指摘もありました。このような臨床現場の理想と技術開発の難しさのギャップは、イ ノベーションサロンでの膝つきあわせた議論で、乗り越えることができるものと思っております。

3)セミナーの開催
 イノベーションサロンは、はり姫の看護師を中心とした医療関係者向けのセミナーの開催等、交流の場として も使用されています。昨年度は、月に1回程度開催され、はり姫の看護師を講師としたがん看護に関するセミナー、看護師同士の交 流を目的とした集まり、地域の連携を目指したカンファレンス等を実施しました。セミナーでは、看護師がどのように業務を行っているか垣間見ることができ、患者も安心して看護を受けられ ると実感しました。
 今年度は、セミナーに加え、診療科ごとの勉強会も予定されており、はり姫の看護師の勉強熱心さが伝わって きます。 また、セミナーでは、参画企業の方の要望をテーマとしてアンケートをとり、看護現場の情報収集にあたって います。手袋、テープ等、いつも使用している身近なものについては、数多くの意見が聞けています。このよう な意見は今後の新規事業創生のヒントになると考えております。

5.最後に

イノベーションサロンは、昨年8月に開所したばかりで、まだ、実際の事業の創生には至っていませんが、い くつかの興味深い芽も出てきており、今後、ますますの活動の活発化を目指しています。 皆様のご支援とご協力をよろしくお願い致します。

 

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